2022年4月1日

FinOps

クラウドコストマネジメントのベストプラクティス

この記事では、開発者から経営陣まで全ての関係者がコストを削減できるよう、クラウドのコストマネジメントのベストプラクティスを複数紹介します。

Cloud Cost Management Best Practices

クラウドコストマネジメントとは、クラウドにかかる費用を効率的に管理するための概念です。通常、クラウドに関連するコストを把握し、不要な費目を排除していくことになります。コスト管理に近道はありません。適切な計画を立て、基本的なことを正しく理解し、チームを巻き込んで状況の重要性を理解してもらわなければなりません。クラウドのコスト管理は、最近ではクラウドプロバイダーにとって重要なテーマとなっており、あらゆるソフトウェア企業にとって新たな要件となっています。 

2020年、Gartnerはパブリッククラウド市場が2579億ドルに成長すると予測し、企業はパブリッククラウドへの支出を合わせて908億ドルを浪費すると予測しました。パブリッククラウドプロバイダーに不満はないでしょうが、エンジニアと財務部門から文句が出ることは確実です。Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)などのクラウドプロバイダーにかかる費用は、IT予算の中でより大きな割合を占めるようになってきているのです。

また、ガートナーは最近のプレスリリースで、世界の企業IT支出全体でクラウド市場が占める割合は2020年の9%から2024年には14%に達することを示唆しました。

この数字は決して軽微なものではないので、初めて知る方は注意してください。クラウドに何十億ドルも費やす企業は、コストを効率的に管理しなければなりません。しかし、これは現在行われていることとは正反対です。

私たちは毎年、全クラウド費用の約35%を無駄にしています。さまざまな理由から、この割合は気になるところです。しかし、ほとんどの企業はクラウドコストの最適化に失敗しているようです。ある企業はプロビジョニングを過剰に行い、ある企業はインスタンスサイズを間違え、残りの企業は使用していないときにVMをオフにするのを忘れています。

クラウドコスト管理ツールは、DevOps、インフラストラクチャー、エンジニアリング、および財務の各チームが、クラウドリソースの利用状況とそのコストを詳細に把握できるよう支援します。これらのツールは、クラウドへの投資を最大化するために、支出の計画、分析、把握、削減に必要なものです。また、さまざまなコスト最適化の機会を特定することで、クラウド利用のビジネス価値を最大化することにも役立ちます。企業がクラウドベースのテクノロジーを採用する傾向が強まっている点を鑑みると、クラウドリソースの最適化とクラウドコストの最適化戦略の策定に着手することが重要です。 

Harnessの調査では、クラウドのコスト管理ツールは主に以下のようなユースケースで利用されていることが分かりました。 

クラウドコストの最適化。企業は、クラウドプロバイダーに対して定期的に過剰なコストをかけており、必要なもの/使用した分だけ支払うよう、コストを削減したいと考えています。クラウド関連のコストを最適化する必要があります。 

クラウドコストの透明性。経営陣から開発者まで、組織のあらゆる層でクラウドコストを可視化する必要があります。全ての利害関係者が、自分に関連する文脈でクラウドコストを理解できるようにする必要があります。

クラウドコストガバナンス。クラウドコストに関する予算枠を決め、コストを確実に管理するプロセスを構築する必要があります。

HarnessのCloud Cost Managementツール、CloudCheckr、CloudZero、Spotなどがあり、クラウドコストの最適化、クラウド費用の削減を支援します。

コスト削減は一度きりではありません。エンジニアと財務部門には、革新と変革のための絶え間ないフィードバックが必要です。だからこそ、クラウドコストマネジメントです。

このブログでは、クラウド全体の請求額を減らし、クラウドコストを節約するための、クラウドコスト最適化のベストプラクティスについてご紹介します。

クラウドコストマネジメントのベストプラクティス

以下に説明するクラウドコスト管理のベストプラクティスを参考に、コストを特定のビジネス活動に関連付けるクラウドコスト最適化戦略を策定し、クラウド予算が誰に、何を、なぜ、どのように費やされているかを確認することが可能です。

未使用のリソースのサイズ適正化またはリサイズ

クラウドインフラのコストを削減する最も効果的な方法の1つは、クラスターが最適なサイズに設定されていることを確認することです。Azure AdvisorHarness CCMなどのツールでリソースの使用率を確認し、リソースのサイズを変更または適正化することでクラウド費用を削減する方法について推奨を受けることができます。

HarnessのCCMは、構成を分析し、クラスターリソースを最適化するための実行可能な推奨事項をパフォーマンスとコストの観点から提供します。推奨事項を実行することで、コストを最適化し、クラウドの請求額を削減できる可能性があります。また、インスタンスファミリー全体の変更も推奨されます。サイズ適正化は、単にクラウドのコストを削減するだけでなく、クラウドの最適化、つまり支払ったリソースの最大限の活用を可能にします。

Rightsize or Resize Underutilized Resources

スポット的な活用

スポットインスタンスはRI(訳注:後述のリザーブドインスタンス)とは異なりますが、AWSやAzureの支出をより節約することができます。HarnessのAutoStopping Rulesは、アイドル状態のVMやコンテナを自動的にシャットダウンし、スポットインスタンス上で無停止で動的に稼働させることができ、最大で75%のコスト削減を実現します。

Take Advantage of Spot Instances

未使用のリソースのシャットダウン

クラウド管理プラットフォーム/ツールを使って、アイドル状態、未割り当て状態、使用率の低い仮想マシン/リソースを検出することができます。アイドル状態のリソースとは、以前稼働させてから放置されており、コストが増加しているものです。未割り当てまたは使用率の低い仮想マシン(VM)は、購入後に一度も使用されていないものです。

どのクラウドプラットフォームでも、使った分だけ支払うのではなく、注文したり購入したりした分だけ支払います。不要になったリソースを整理することで、クラウド料金を大幅に削減できます。

Harness CCMは、アイドル状態や未割り当てのリソースのコストを分析し、クラウドの使用状況を把握することができます。また、クラウド環境に応じてHarnessの詳細をフィルタリングすることも可能です。アイドル状態のリソースを特定したら、それをシャットダウンすることでクラウドコストを削減できます。

Shut Down Unused Resources

自動停止ルールの設定

Harnessには独自のクラウドコストインテリジェンス機能があり、アイドル状態のVMやコンテナを自動的にシャットダウンし、スポットインスタンスで動的に無停止で稼働させ、最大75%のコスト削減を実現します。そのためにはクラウドリソースに自動停止ルールを設定します。

AutoStopping Rulesは、非本番ワークロードのためのダイナミックで強力なリソースオーケストレーターです。クラウドリソースにAutoStopping Rulesを組み込むことで、以下のような大きなメリットが得られます。

  • アイドルタイムを自動的に検出し、リソースをシャットダウン(オンデマンド)またはターミネート(スポット)します。
  • スポットインスタンスの中断を気にすることなく、完全にオーケストレーションされたスポットインスタンス上でワークロードを実行できるようになります。
  • 特に勤務時間中のアイドルタイムを静的に予測します。
  • 強制シャットダウンでは不可能な、停止または終了したマシンへのアクセスを可能にします。
  • コンピューティングの最適化を行わず、スタート/ストップ操作のみでクラウドリソースを停止します。

クラウドコスト異常の検出 

クラウドコスト異常検知は、クラウドコストを抑制するためのツールとして活用できます。コスト異常検知は、クラウドコストを抑制(節約)するために注意すべき点を指し示します。クラウドコストに大幅な増加があった場合、アラートが発動されます。これにより、潜在的な無駄や予期せぬ請求の発生を把握することができます。また、日、週、月単位で繰り返し起こるイベント(季節性)も記録されます。

アップタイム、ダウンタイムの固定スケジュール設定

リソースのアップタイムとダウンタイムの固定スケジュールを設定します。例えば、金曜日の午後5時から月曜日の午前9時まで、特定のリソースを利用不可としたいとします。選択したリソースのダウンタイムをこの期間に指定することができます。指定したサービスはこの期間内は利用できず、コストの削減になります。また、複数のチームが同じリソースを利活用している場合にも便利です。

Configure Fixed Schedule for Uptime or Downtime

AWS Reserved Instances(RI)とAzure Reserved Virtual Machine Instancesの活用

長期的にクラウドを利用する予定の企業では、リザーブドインスタンスに投資することをお勧めします。これは、前払い金と時間のコミットメントに基づく、より実質的な割引です。RIの節約効果は最大で75%に達するため、クラウドのコスト最適化には欠かせない存在となっています。RIは1年または3年単位で購入できるため、過去の使用状況を分析し、将来に向けて適切に計画することが重要です。

Amazon EC2 Reserved Instances(RI)は、オンデマンド価格と比較して大幅な割引(最大72%)を提供し、特定のアベイラビリティーゾーンで使用する場合に容量を予約することが可能です。リザーブドインスタンスは物理的なインスタンスではなく、アカウント内のオンデマンドインスタンスの使用に適用される課金割引です。割引を受けるには、これらのオンデマンドインスタンスが、インスタンスタイプや地域などの特定の属性に適合している必要があります。また、節約プランでは、オンデマンドインスタンスの価格と比較して、Amazon EC2のコストを大幅に削減できます。貯蓄プランでは、1時間あたりの米ドル建て使用量を一定に保つことになります。このため、特定のインスタンス構成にコミットするのではなく、ニーズに合わせて最適なインスタンス構成を柔軟に利用し、継続的にコストを削減することができます。

Azure Reserved Virtual Machine Instancesは、WindowsとLinuxのVMを1年または3年の期間で利用することにより、従量課金制と比較して最大72%のコスト削減を実現します。Azure RIによるコスト削減とAzure Hybrid Benefitの付加価値を組み合わせると、最大で80%のコスト削減が可能です。

チームやプロジェクトの予算設定としきい値の設定

カスタム予算を作成し、コストが予算を超えた(または超えそうな)ときに通知を受け取ることができます。また、予算に対する割合のしきい値を実際のコストまたは予測コストに基づいて設定できます。 

チームやビジネスユニットごとに予算としきい値を設定することで、クラウドの無駄を大幅に省くことができます。 

クラウドセンターオブエクセレンスチームの結成

クラウドセンターオブエクセレンス(CCoE)は、エグゼクティブ(CFO、CTO)、ITマネージャー、オペレーションマネージャー、システムアーキテクト、アプリケーション開発者、ネットワークエンジニア、データベースエンジニアで構成されるチームです。クラウドのコスト最適化のための領域を特定するのに役立ちます。また、CCoEチームは、どのクラウドプロバイダーがお客様のニーズに最も適しているか、必要なクラウドサービスの種類、クラウドの容量、クラウド環境などの判断も支援します。これらの要素は全て、コストを制御する上で重要な役割を果たす可能性があります。

リアルタイムデータでタイミング良くコスト判断

適切なクラウドリソース利用データを可視化できればクラウド支出に大きな利点があります。AWS Cost Explorer、Azure Cost Management、Apptio Cloudability、Harness Cloud Cost Management(CCM)などのツールにより、シンプルで直感的なインターフェイスでクラウドコストを表示、理解、分析することが可能です。Harness Perspectivesを使用すると、これらのデータ全てにビジネス上の意味合いを持たせることができます。Perspectivesを使用すると、リソースをビジネスニーズに関連した方法でグループ化し、より多くの情報に基づいた意思決定を行えるようになります。

Make Timely Cost Decisions With Real-Time Data

「クラウドコストインパクト」カルチャー

全ての主要な機能設計には、クラウドコストインパクトについての確認項目を含める必要があります。時間の経過とともに、アプリケーション開発者と部門横断的なチームの間で、コストは単に最適化すべき境界条件の1つであるという考え方と文化が育まれます。

結論

これらのクラウドコスト管理のベストプラクティスが、難しい質問を投げかける一助となることを願っています。クラウドコストを可視化し、クラウドリソースを最適化するために、適切なクラウドコスト管理ツールを使用していますか?クラウドコストに対して受け身になっていませんか? 

Harness Cloud Cost Managementを使用することで、コストの急上昇を未然に防ぐことができます。Harness CCMは、クラウドのコスト分析管理を、クラウドリソースを利用するエンジニアが使いやすいよう設計されています。ドキュメントを読んで、その機能と提供サービスについてさらに理解を深めてください。

Harness Cloud Cost Managementを実際に見てみたいですか?デモをご依頼いただければ、Harnessの担当者がHarness Cloud Cost Managementをご紹介します。また、こちらの記事で最適なCCMツールをご紹介しています。


この記事はHarness社のウェブサイトで公開されているものをDigital Stacksが日本語に訳したものです。無断複製を禁じます。原文はこちらです。

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