2023年6月1日

FinOps

財務担当者必読、クラウド費用予測のコツを解説

財務部門は、クラウド費用の予測に何を含める必要があるでしょうか。予測が難しいクラウド費用に翻弄される日々とはもうお別れしましょう。

Cloud Cost Forecasting image header.pngこの記事はJeffrey’s Substackで公開されたものです

予期せぬクラウドの請求書に悩まされたことのある人は多いでしょう。気ままに航海しているところに、突然心臓が止まるほどの額の請求書と衝突するような感覚でしょうか。制御不能なクラウド支出が発生した場合、財務担当者は経営陣に予算との差異を説明するのに追われることがよくあります。

今やクラウド費用の最適化は重要なテーマであり、これらのコストを抑えるよう経営陣からプレッシャーがかけられていますが、オーナーシップの欠如と複雑さにより、コストはすぐに制御不能になる可能性があります。財務担当者が、予測〜推測〜最善の結果を期待するという終わりのないサイクルに陥っていると感じるのも不思議ではありません。

しかし、クラウド費用の可視性を向上させ、クラウド費用を管理できる、もっとよい方法があるとしたらどうでしょう。財務部門がクラウド費用の予測に何を含める必要があるかについて、ポイントを解説します。予測不能なクラウド費用に翻弄されるのはもうやめましょう!

実績値

本題に入る前に、決定的に明白な点、つまり実績値について触れておきたいと思います。実績値が財務モデルと一致するときほど、金融アナリストが心穏やかになるときはありません。実績値は、全ての優れた財務モデルを構築する基盤です。

大手クラウドベンダーが提供する実績値レポートは、クラウド費用を確認はできますが、財務担当者のニーズには不十分なことがよくあります。クラウド費用には、財務のための実績値の収集に関して特有の課題がいくつかあります。

  • 直接または再販業者経由での購入:クラウド費用は、ベンダーから直接、または再販業者を通じて入手できます。再販業者は多くの場合、クラウドベンダーが直接提供する従来のレポートとは別に、サポート、プロフェッショナルサービス、割引プログラムなどの付加価値サービスを提供しています。
  • 請求日と使用日会計部門には経費を総勘定元帳に記録するための請求日が重要ですが、エンジニアリング業務ではクラウドプロバイダーのレポートソリューションで報告される実際の使用日を確認する傾向があります。誰にいつ聞くかによって、使ったクラウド費用の回答は異なります。
  • 割引、クレジット、マーケティングファンド(MDF):クラウドベンダーは、自社のプラットフォームに顧客を引き付けるためにさまざまなインセンティブを用意しています。これらのインセンティブは、アカウントのさまざまなレベル(支払者レベルやプロジェクトレベルなど)で追跡できるため、同一条件で比較するには、これらのインセンティブを一貫して割り当てる戦略を採用することが重要です。
  • アロケーション、ショーバック、チャージバック:企業では、「真の所有コスト」を把握し、担当者にクラウド使用のコスト責任を負わせるために、こういった戦術を採用します。

では、財務担当者は何をすべきでしょうか? 重要なのは、得てして物事がうまくいかなくなったときに知らせてくれるデータに基づき予測を立て、将来のリスクと機会を乗り越えるために必要な情報を提供することです。

クラウド費用予測に含める必要がある項目は次の通りです。

  1. ベンダー
  2. サービス
  3. 環境
  4. 製品/チーム
  5. イニシアチブ

‍ベンダーとは

ベンダーは、SaaSアプリケーションを支えるクラウドサービスのプロバイダーです。企業は成長するにつれマルチクラウド戦略を策定し始め、ますます複雑な技術スタックを開発するようになり、ベンダーのリストが爆発的に増加します。混乱を収集するために、クラウドベンダーをインフラストラクチャーとSaaSの2つのグループに分類するといいでしょう。

  • インフラストラクチャーベンダーSaaSアプリケーションが実行されるインフラストラクチャーを提供します。AWS、GCP、Azureなどの大規模なパブリッククラウドプロバイダーです。
  • SaaSベンダー企業がエンドユーザーアプリケーションを効果的、効率的、安全に実行できるようにするコアサービスを提供します。大手パブリッククラウドベンダーはこの分野で競合ソリューションを提供していますが、HashiCorp、MongoDB、Datadog、Cloudflare、GitHub、そしてHarnessといった企業もあります。

なぜベンダーを含めるのか

ベンダー別の支出を把握することで、財務担当者はベンダーとの将来の支出を見積もり、その情報を契約交渉に活用できるようになります。これらの契約コミットメントは、新規株式公開計画に関する登録届出書または年次報告書で報告されるのにも十分な資料であるため、可視性が向上し最適化が進みます。

‍サービスとは

これらは、アプリケーションを実行するコアのクラウドインフラストラクチャーサービスです。アプリケーションが実行するアクティビティーの種類によっては、サービスの数が膨大になる可能性があり、サービスの組み合わせも大きく異なります。特にインフラストラクチャーべンダーはサービス内で数百のSKUを提供しているため、コスト傾向の分析が複雑になります。これらのサービスを見る上で重要な項目は次の通りです。

  • コンピューティングこれらのサービスは、アプリケーションとワークロードを実行するための仮想マシン、コンテナ、サーバーレス環境を提供します。
  • ストレージ/データベースこれらのサービスは、システムアーキテクチャーに応じてブロック、ファイル、オブジェクトストレージなどのさまざまなストレージソリューションを提供します。また、リレーショナルデータベースやNoSQLデータベースなど、さまざまなデータベースアプリケーションも含まれます。
  • ネットワーキングこれらのサービスは、クラウドでのネットワークと接続の設定、管理、セキュリティー保護に役立ちます。
  • その他ビッグデータ、分析、AI/ML、セキュリティーとアイデンティティー、管理ツールと開発者ツールが含まれます。これらのカテゴリーいずれかでの支出が非常に大きい(10%超)場合は、独自のカテゴリーを作成するべきでしょう。サービスの合計を7カテゴリー未満にグループ化し、他の項目がクラウド支出全体の10%未満になるように努めましょう。

なぜサービスを含めるのか

アプリケーションを構成する基盤となるサービスは、アプリケーションのアーキテクチャーに関するインサイトを提供します。これらのサービスを含めることで、財務担当者はクラウド関連の出費を正確に予測、最適化、制御できるようになります。

環境とは

環境は、開発プロセスが分割されるグループです。

  • 本番環境:本番環境は顧客の使用状況に直接関係するため、売上原価に寄与します。本番環境にはいくつかありますが、一般的な例には本番とステージングが含まれます。本番環境の分類はグレーゾーンがちですが、曖昧さを解消するには、「ダウンしたら関係者を叩き起こすもの」(Harnessエンジニアリング運用責任者Chris Ham氏)と考えればいいでしょう。
  • 製品開発のための非本番環境:この環境は製品の研究開発に直接結びついているため、研究開発費として記録する必要があります。
  • その他の非本番環境:特定の理由で社内のさまざまなチームが使用している環境であり、経費の記録はチームに従う必要があります。例としては、顧客との通話用のデモ環境、試用用のPoC環境、テスト用のカスタマーサクセス環境、ユーザー用の製品教育/トレーニング環境などがあります。

なぜ環境を含めるのか

環境ごとにコストを分離すると、時間の経過とともにさまざまなコスト要因が上下し、どのようにコストが拡大するかについて、資金調達インサイトが得られます。以下は、予測に使用されるコスト要因です。

  • 収益に対する支出の割合収益に対するクラウド支出の比率です。この指標は簡単な予測戦略のように見えますが、よろしくないアプローチです。オンボーディング時間、ライセンスの使用状況、価格設定戦略により、収益がクラウド支出と一致しない可能性があるため、このアプローチは誤ったセキュリティー感を招く可能性があります。相関関係 != 因果関係です。
  • 顧客の使用状況本番環境のコストの予測に最適な指標です。製品内で行われた顧客のアクションを追跡し、それによってワークロードの実行がトリガーされ、最終的にはクラウド費用が発生します。この項目は粗利益に直接影響するため、コストと相関する使用単位を特定するには、エンジニアリングと連携することが重要です。
  • コードを書く開発者の数この指標は、製品開発活動からの非本番コストの予測に最適です。この傾向を長期的に分析して開発者当たりの企業の支出を確立し、エンジニアリング運用と協力してコストの責任をエンジニアリングチームに持たせられます。
  • 有効なPoC:この数値は、顧客が一定期間内に製品を使用する際の販売およびマーケティング環境のコストを予測するために使用できます。プリセールス活動でコストが制御不能にならないように、これらの環境にゲートキーパーを確立することが重要です。
  • サポートチケットの数/CSMの数:カスタマーサポートの問題に関連する環境コストを予測するために使用できます。

製品/チームとは

企業は成長し規模を拡大するにつれ、クラウド費用の支出プロファイルを変える追加の製品やコア機能をSaaSプラットフォームに追加し始める可能性があります。さらに、顧客に購入前に製品を試すよう促す新しい市場開拓戦略を導入する可能性もあります。

  • 複数製品:企業が収益を得るために販売している全てのSaaS製品が、クラウド費用を生み出しています。
  • フリーミアム:無料で提供される限定使用製品。無料ですがクラウド費用は発生します。

なぜ製品/チームを含めるのか

製品の組み合わせと市場投入戦略は、提供コストだけでなく各製品の価格設定戦略を通じて、ビジネスの粗利益プロファイルに多大な影響を与えます。

  • サービス提供コストアプリケーションを実行するための基本的なコストです。各アプリケーションはサービスを独自に組み合わせたものであり、クラウド費用が発生します。これらのコストがどのように拡大するかを理解することは、企業の粗利益の将来予想には重要です。さらに、エンジニアリング企業では、自社に対してベンチマークを行い、チーム全体の説明責任を推進できる製品を中心に組織されることが増えています。
  • 価格設定とパッケージング粗利益を拡大するための企業のツールキットの最大の手段です。価格設定とパッケージングは単純にコストの関数ではない可能性がありますが、ライセンスを受けたユニットとクラウド費用の1ドルの増加との相関関係を理解することが重要です。

イニシアチブとは

イニシアチブは、クラウドのコスト実行率に影響を与えるまったく新しいアクティビティーです。2つの項目に分けるといいでしょう。

  • 純新規ワークロードこれは、エンジニアリングチームが構築する必要がある新しい製品、機能、またはサービスの組み合わせである可能性があります。これらの決定を財務に優しい方法で伝えてくれるFinOpsチームやエンジニアリングチーム内に友人を見つけるのが最善です。
  • クラウド費用最適化戦略:これだけで詳しく記事を書けるアプローチではありますが、要約すると次の通りです。
    ・契約割引:財務の観点から見たコスト最適化戦略の最も簡単な成果です。この戦略は、エンジニアリングによって制御される実際のインフラストラクチャーは影響しませんが、企業はリザーブドインスタンス、貯蓄プラン、エンタープライズ割引などの割引プログラムを利用でき、財務担当者とFinOps担当者によって推進されます。
    ・リソースの最適化:契約上の割引から一歩進んで、リソースの最適化戦略では製品の実際のインフラストラクチャーの調整を始めます。例としては、サイジングの適正化、リソースのダウンタイムのスケジューリング、スポットインスタンスの活用、コストの異常検出などが挙げられます。
    ・アーキテクチャー:費用最適化戦略の中で最も困難です。これらは長期的なエンジニアリング上の決定であり、エンジニアリング部門が別の方法で作業を行うことを決定した結果です。

なぜイニシアチブを含めるのか

財務担当者が戦略的意思決定の影響を明確にし、定量化できるようにするためです。
 

結論として、想定外のクラウド費用の悩みは、財務担当者にはお馴染みです。しかし希望はあります。クラウド費用の適切な粒度での予測を構築することで、どこに何に費やしているのかを明確に理解できるようになります。次回の投稿では、これらの要素を実装し、クラウド費用予測を作成する方法に関する実践的なアドバイスを共有します。乞うご期待!


この記事はHarness社のウェブサイトで公開されているものをDigital Stacksが日本語に訳したものです。無断複製を禁じます。原文はこちらです。

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