2023年5月13日

SRM

信頼性管理のためのエラーバジェットの活用法

このブログでは、エラーバジェットの重要性、計算方法、そしてサービスの信頼性を向上させるための効果的な管理方法についてご紹介します。

Reliability Management‍ Banner.pngエラーバジェットは、高可用性システムを管理するチームにとって不可欠なツールであり、イノベーションと新機能の必要性と信頼性と安定性の必要性のバランスをとるのに役立ちます。エラーバジェットを設定することで、チームは最も重要な問題に焦点を当て、それに応じて作業の優先順位をつけ、サービスの信頼性と安定性を長期にわたって確保できます。しかし、残念ながら、多くのサイト信頼性エンジニアリング(SRE)チームはエラーバジェットを導入していないため、サービスレベル目標SLOのメリットを十分に享受することができていません。

 

このブログでは、エラーバジェットの重要性、計算方法、そしてサービスの信頼性を向上させるための効果的な管理方法についてご紹介します。

エラーバジェットの概要

エラーバジェットは、アプリサービスの信頼性を管理する上で重要な概念です。本来は、あるSLOの違反の許容数を制限するバジェットです。システムを頻繁に変更する場合、失敗は避けられません。ある一定量の障害を標準化することで、チームはイノベーションとサービスレベルアグリーメントSLA)違反のリスクのバランスをとることができます。

Google SREハンドブックによると、「エラーバジェットは、1からサービスのSLOを引いたものです。99.9%のSLOサービスのエラーバジェットは0.1%です。私たちのサービスが4週間で100万件のリクエストを受けた場合、99.9%の可用性を持つSLOでは、その期間に1000件のエラーバジェットを確保できます。

エラーバジェットは、障害の発生を奨励するものではなく、信頼性に関して現実的で達成可能な目標を設定するものです。これにより、SREと開発チームが連携し、SLOの達成を確認することでリリース速度を制御できるようになります。」

 

エラーバジェットが重要な理由

エラーバジェットは、信頼性を測定・管理する方法を提供すると同時に、イノベーションと新機能を可能にするため、非常に重要です。エラーバジェットを設定し、それを効果的に管理することで、チームはサービスの信頼性と一貫性を長期間にわたって確保できるので、ユーザーエクスペリエンスとビジネス成果の向上につながります。さらに、次のようなことも可能になります。

 

  • 信頼性の向上:エラーバジェットは、チームが最も重要な問題に焦点を当て、それに応じて作業の優先順位をつけるのに役立ちます。エラーバジェットを設定することで、チームはサービスの信頼性と一貫性を長期にわたって確保できます。
  • ダウンタイムの削減:エラーバジェットを設定すると、チームはプロアクティブにエラーを監視・追跡し、改善を特定して優先順位を付け、イノベーションと信頼性のバランスを均衡に保てます。これにより、ダウンタイムが短縮され、サービス全体の可用性が向上します。
  • ユーザーエクスペリエンスの向上:サービスの信頼性と一貫性があれば、ユーザーはユーザーはよりポジティブな体験ができます。その結果、顧客満足度やロイヤリティーが向上し、最終的にはビジネスの成果につながります。
  • 指標主導の意思決定:エラーバジェットはSLOを測定・管理する方法を提供し、その結果、データに基づいた意思決定に役立ちます。エラーバジェットやその他の指標を監視することで、チームはトレンドや問題を迅速に把握し、どこに力を入れるべきか、情報に基づいた意思決定ができます。

エラーバジェットを計算する方法

エラーバジェットを計算するには、いくつかの重要な手順が必要です。その方法は次の通りです。

 

  1. SLOを定義する:エラーバジェットを計算する最初のステップは、SLOを定義することです。これには、提供されるサービスの明確な定義と、必要とされる可用性やアップタイムのレベルが含まれる必要があります。
  2. 許容可能なエラー率を決める:SLOを定義したら、次のステップは、許容可能なエラー率を決めることです。これは、SLO内のエラー、またはダウンタイムの最大許容率です。
  3. 許容エラー、またはダウンタイムの合計を計算する:許容エラー率を使って、SLOの許容エラー、またはダウンタイムの合計を計算します。これは、許容可能なエラー率に合計期間(例えば、1カ月)を掛けることで実行できます。
  4. 実際のエラー、またはダウンタイムを測定する:次のステップでは、同じ期間におけるSLOの実際のエラー、またはダウンタイムを測定します。これは、さまざまな監視ツールや手法を使用して実行できます。
  5. エラーバジェットの計算:エラーバジェットを計算するには、許容されるエラー、またはダウンタイムの合計から実際のエラー、またはダウンタイムを差し引くだけです。残りのバジェットは、SLOの範囲内で許容されるエラー、またはダウンタイムの量を表します。

 

これらの手順に従うことで、チームはSLOのエラーバジェットを計算し、それを使ってサービスの信頼性を管理できます。エラーバジェットは、定期的に見直して更新し、適切かつ効果的なものにすることが重要です。さらに、エラーバジェットは現実的に設定し、管理対象のサービスやシステムの特定のニーズと目標を考慮する必要があります。

エラーバジェットが失敗する理由

エラーバジェットには多くの利点がありますが、適切に実装・管理されないと失敗する可能性があります。エラーバジェットの概念は、次のGoogle SRE Handbookで提示されている定義に厳密に従うと、実現が難しくなります。

 

「エラーバジェットは、1からサービスのSLOを差し引いた値です。99.9%のSLOサービスのエラーバジェットは0.1%です。私たちのサービスが4週間で100万件のリクエストを受けた場合、99.9%の可用性を持つSLOでは、その期間中に1000件のエラーのバジェットを確保できます。」

 

この定義をより実践的なものにするために、あらゆるエラーバジェットを時間ベースのエラーバジェットに変換できます。これを行うには、SLOの定義とエラーバジェットがリセットされる期間を組み合わせます。例えば、特定の指標のSLOが99.9%であるとします。リセット期間に基づいて、可能なバジェットの表を作成できます。下の表は、SLOが99.9%で、リセット期間が1週間の場合、合計10.08分間SLOに違反できることを示しています(これがその週のエラーバジェットです)。通常、SLO違反の分析は1分ごとに計算されます。 

Error Budget Table.pngエラーバジェットが失敗するその他の一般的な理由は次の通りです。

  • 明確なSLOの欠如:明確なSLOがないと、エラーバジェットが無意味になる可能性があります。SLOは、具体的・測定可能・達成可能・関連性があり、期限が定められている必要があります。SLOが明確に定義されていない場合、エラーバジェットの計算と管理が困難になるかもしれません。
  • エラーバジェットの再検討と更新の失敗:エラーバジェットは定期的に再検討して更新し、関連性と有効性を維持する必要があります。エラーバジェットが定期的に更新されないと、エラーバジェットが古くなり、サービスのニーズを反映できなくなる可能性があります。
  • 優先順位付けの欠如:効果的なエラーバジェット管理には優先順位付けが鍵となります。サービス全体の信頼性に与える影響を考慮して改善や修正に優先順位をつけないと、重要な問題が対処されないまま、優先順位の低い問題が貴重なリソースを消費することとなります。
  • コミュニケーション不足:チームがエラーバジェットやその変更をステークホルダー(開発者、経営陣、チームメンバーなど)に効果的に伝えていない場合、信頼と透明性が損なわれる可能性があります。この問題を回避する最善の方法は、全てのチームメンバーが最新の指標とプロセスをいること使っていることを確認する、自動化された信頼性ガードレールを使うことです。
  • エラーバジェットを他の指標と併用していないこと:エラーバジェットは、高可用性システムを管理するための便利なツールですが、他の指標や手法と組み合わせて使う必要があります。チームが平均修復時間MTTR)や平均故障間隔MTBF)などの他の指標を考慮せず、エラーバジェットのみに依存している場合、システムの信頼性を包括的に理解していない可能性があります。

 

このよくある失敗の理由を理解することで、チームはそれらを回避するための対策を講じ、エラーバジェット管理を効果的に行い、成功に導けます。エラーバジェットは高可用性システムを管理するための強力なツールですが、効果を発揮するには慎重な計画、実行、継続的な管理が必要です。

 

エラーバジェット管理のためのベストプラクティス

エラーバジェットを計算したら、それを効果的に管理して、サービスやシステムの信頼性と一貫性の確保することが重要です。エラーバジェットを管理するためのヒントをいくつかご紹介します。

 

  • 優先順位の設定:エラーバジェットを管理するときは、サービス全体の信頼性に与える影響に基づいて、改善と修正に優先順位を付けることが重要です。まず重要な問題を優先的に解決することで、ダウンタイムが短縮され、可用性が向上します。
  • 自動化によるステークホルダーとのコミュニケーション:エラーバジェットとその変更について、開発者、経営幹部、チームメンバーなどのステークホルダーとコミュニケーションを取ることが重要です。CI/CDパイプラインで信頼性ガードレールを活用して、SLO、エラーバジェットに対する全ての変更が自動的に適用されるようにしましょう。これが組織全体の一貫性を確保する唯一の方法です。
  • イノベーションと信頼性のバランスをとる:新しい機能を革新して導入することと同様に、信頼性と一貫性を維持することも重要です。チームはエラーバジェットを使って、革新性と信頼性のバランスをとり、サービスが長期にわたって安定的に維持されるようにする必要があります。
  • 間違いから学ぶ:本番環境で問題が発生した場合、そこから学び、その知識を活用して改善を図り、今後同様の問題が発生するのを防ぐことが重要です。これは、サービスの信頼性を継続的に向上させるのに役立ちます。

これらのヒントに従うことで、チームはエラーバジェットを効果的に管理し、サービスの信頼性と一貫性を長期にわたって維持できるようになります。エラーバジェットは、イノベーションと信頼性を両立させるためのツールであり、高可用性システムを管理するための他の指標や手法との併用が重要であることを覚えておいてください。

エラーバジェットの例

例1:ストリーミングサービス

あるストリーミングサービスのSLOは、1カ月間の可用性が99.9%です。これは、1カ月当たりの最大許容ダウンタイム時間が43.2分であることに相当します。チームは、その月のダウンタイム43.2分としてエラーバジェットを計算します。スタッフはサイトを継続的に監視し、ダウンタイムがこのバジェットを超えた場合は是正措置を講じます。

 

例2:eコマースウェブサイト

あるeコマースサイトでは、ログインにかかる時間が300ms未満の場合、SLOは99.9%です。これは1週間で、最大許容SLO違反時間(エラーバジェット)10.08分に相当します。エラーバジェットがゼロになった場合、チームは新しいソフトウェアのデプロイを中止し、システムの安定化に取り組みます。緊急の修正や新しいデプロイは、高い権限を持つ誰かによって承認される必要があります。

結論

エラーバジェットは、高可用性システムの信頼性を管理するための強力なツールです。エラーバジェットを設定し、効果的に管理することで、チームは革新性と信頼性のバランスをとり、サービスの安定性と可用性を長期にわたって維持できます。これは、顧客、ステークホルダー、チームメンバーとの信頼を築くのに役立ちます。

 

エラーバジェットを効果的に実施するために、チームは明確なSLOを設定し、時間ベースのエラーバジェットを設定し、定期的なエラーバジェットの見直し・更新・改善・修正の優先順位を決め、ステークホルダーとコミュニケーションをとり、他の指標と併用してエラーバジェットを使用する必要があります。これらのベストプラクティスに従うことで、チームは高可用性システムの信頼性を効果的に管理し、サービスが顧客やステークホルダーのニーズを確実に満たせます。

 

テクノロジーが進化し、顧客の期待が高まる中、高可用性システムの信頼性を管理する上でエラーバジェットがさらに重要になります。エラーバジェットを採用し、エラーバジェット管理のベストプラクティスを実装することで、チームは顧客やステークホルダーのニーズを長期にわたって満たす、信頼性の高い、スケーラブルで回復力のあるシステムを構築できます。

 

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この記事はHarness社のウェブサイトで公開されているものをDigital Stacksが日本語に訳したものです。無断複製を禁じます。原文はこちらです。

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